東洋医学における病気の原因「病因」と日常生活の注意について

東洋医学(伝統鍼灸)では、病気になる原因を病因びょういんといいます。この「病因」について簡単に纏めてみました。


伝統鍼灸などの東洋医学では、以下のようなものを病気になる原因「病因びょういん」としてとらえています。

内因

東洋医学では、病気になる原因として、「内因ないいん」という自分自身の心の問題を非常に重要視しています。

内因には、怒・喜・思・憂・悲・驚・恐 があります。

は文字通り、怒りの感情です。
怒りの感情が強くなりすぎると、肝を悪くします。
(逆に肝が悪くなると怒りの感情が出やすくなります。)

は、おおらかでにこやかな感情です。これが過剰になりすぎると心を悪くします。

は、色々と考える感情をさしています。色々考えすぎると脾を悪くします。

憂・悲は、憂い悲しむ感情です。これが強くなりすぎると肺を悪くします。

驚・恐は、驚いたり恐れたりの感情です。これが過剰になると腎を悪くします。

内因としては、これらの精神活動から病気を引き起こすと考えています。
※2000年以上前からこのような精神と肉体の関係を考えていた点は評価されるべきだと思います。西洋医学でストレスが病気の原因になる事があるとの考えが出てきたのはわりと最近です。明治初期の西洋医学では理解できなかったため、東洋医学排斥の原因の一つになってしまったといえます。

外因

外からの環境因子として外因がいいんという病因があります。外からの邪気じゃきによって病気になると考えます。
外因の邪気には、風・寒・暑・火・湿・燥 があります。六淫りくいんの邪と言います。
ふうは風(かぜ)、風にあたりすぎると病気になると考えます。現在でもカゼを引いたといいますが、これはこの名残です。
かんは寒さ、寒いところに長くいると病気になります。
しょは熱、過剰に暑いところに長くいると病気になります。
湿しつは湿気、湿度の高いジメジメとしたところに長くいると病気になります。
そうは乾燥。乾きすぎの場所にいると病気になります。

邪気や六淫の邪などと大げさな漢字なので、怪しげに思ってしまいますが、非常に当たり前のことですね。

飲食

当然のことながら、食べ物、飲み物も病因のひとつです。
バランスよく食事をしないと病気になります。食品の寒熱や五味とよばれる酸・苦・甘・辛・鹹(しおからい)といった味をバランスよく食べる必要があります。
食べすぎや不足はよくありません。飲み物も適量が大切です。酒を飲みすぎると良くありません。
※食品の性質については、いずれ記載いたします。

労倦

労倦ろうけんとは簡単に言えば働きすぎです。頑張って働きすぎたりして無理をすれば病気になります。過度の房事も病の原因になります。

疫癘

疫癘えきれいとは、通常の外因よりも強力な伝染性の病因。現在でいう伝染病の細菌・ウィルス等のことです。

素因

素因とは、生まれ持った体質の事です。体質によって悪くなりやすい部位が異なってきます。

まとめ

東洋医学では、大まかには上記のようなものを病気の原因としてあげています。
日常生活では、これ等を考えた上で精神の平穏を保ちつつ、上手く無理をせずに、バランスよい食事をして生活するようにしましょう。

最後に、2000年ほど前に書かれた『黄帝内経素問』上古天真論篇から以下の文章を引用します。
『黄帝内経素問』は東洋医学の原典とされる書籍で、上古天真論篇は『素問』の最初の篇です。すなわち、東洋医学で一番大切なことだと言っても良いかもしれません。

<原文>
上古之人.其知道者.法於陰陽.和於術數.食飮有節.起居有常.不妄作勞.故能形與神倶.而盡終其天年.度百歳乃去.
今時之人不然也.以酒爲漿.以妄爲常.醉以入房.以欲竭其精.以耗散其眞.不知持滿.不時御神.務快其心.逆於生樂.起居無節.故半百而衰也.

『黄帝内経素問』上古天真論篇より引用

<書き下し文>
上古の人、其の道を知る者は、陰陽にのっとり、術数に和し、飲食に節あり、起居に常あり、妄りに労をさず。故に能く形と神と倶にして、ことごとく其の天年を終え、百歳をえて乃ち去る。
今時の人は然らざるなり。酒を以て漿となし、妄を以って常となし、酔いて以て房に入り、欲を以て其の精をくし、以て其の真を耗散す。満を持するを知らず、時ならずして神を御す。務めて其の心を快にし、生楽に逆い、起居に節なし。故に半百にして衰うるなり。

出典:『現代語訳◎黄帝内経素問 上巻』(東洋学術出版社)南京中医学院編石田秀実監訳

この様に2000年もの昔から、「今の人は昔の人と違って節度を持った生活ができていない」といっています。
人間にとって節度をもった生活は一番難しいことでしょうが、出来る範囲で気をつけるようにして下さい。

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