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『鍼灸医術の門』 柳谷素霊著
 第十節 鍼灸治療方法の種々相(3/7)

(二)施灸法の種々相

イ、打膿灸
 拇指頭大から小指頭大位の艾炷(あらかじめ紙筒につめて硬くなつたものを四、五分の高さに切つて皮膚に貼ずる)を燃焼させるのだが、まさに燃焼せんとするとき、両手の小指側で皮膚を圧へるのが法である、次に相撲膏を貼り、膿を出すのである、胸部疾患に第三胸椎の両傍、肩癖に膏肓穴、頭部疾患に肩外穴、臑会穴、腹部疾患に腎兪穴、胎毒、血液溷濁に三陰交穴、中気に外膝眼穴、横痃に青地博士家伝の臀部中央(グロツ氏三角点の辺)に穴を求むるの類である。

ロ、焦灼灸
 これは疣、癰、疔、皮下蜂窩織炎、狂犬、鼠、蛇、毒虫の咬傷部、皮膚癩等の局部を徹底的に焼灼するに用ふるのである。原南陽の「砦草」に「病犬に喰はれゝば多く灸して狗牙の毒を焼尽し、其後解毒丸を用ゆべし」とある「内科秘録」には「本邦にては古く癰疽に灸炳す」とあるはこの焦灼灸のことである。

ハ、生薑灸、蒜灸、韮灸、杏仁灸
 これ等は生薑、蒜、韮、杏仁等の切片又はこれを摺り潰して、泥状としたものを穴処に貼して、その上から、艾(良質でなくともよい)を燃焼さすのである。人参灸にしてもその通りである。殊に隔蒜灸、杏仁灸とて、癰疽、創傷面、咬傷に多く昔から使用されたものである。

ニ、味噌灸
 これは御夢想灸とか、お姫様灸とかと云はれてゐるもので、厚さ二分位にお味噌の平たいダンゴをつくり、それを穴処に貼じて、その上からお灸を据えるのである。

ホ、塩灸
 これは粗製の食塩の方がよく、穴処に食塩を置き(臍のやうなところはバラでつめるが、普通の皮膚面上には日本紙で包み、これを水でしめらして、碁石位にして)その上から灸するのである。人神気を失ひたるに昔しから臍中の塩灸が賞用されたものである。

ヘ、漆灸
 生漆十滴、樟脳油十滴、ヒマシ油適宜をよくまぜて、艾に浸ませ肉池のやうにして置き、それを小さい箸先きで穴処につけるだけである。薬剤の調合にもう一つの方法がある。乾漆一匁、明礬十匁、樟脳五匁、艾適宜を粉末にして、黄柏の煎汁にて艾に混和浸潤させ前記のやうに穴処に点ずるのである。駒井博士の穴村の灸は漆灸であつて、患者は小児病が多いのである。

ト、墨灸
 これも変つたやりかたである。先づ黄柏百匁と水一合との混和せるものを緩火で煎じて五勺とし、これで和墨を摺り濃汁とする、これを黄柏汁和墨といふ。次に、
第一法―黄柏汁和墨五勺位、麝香一匁、龍脳二匁、米の粉末二匁をよく混和して之を細棒で灸処に塗るのである。
第二法―麝香一匁、龍脳一匁、煤煙適宣をよく混和して艾に浸ませ、之を小豆大に丸めて(或は昔しの二銭銅貨位にして)灸処に置き、その上から灸するのである。この方法 は東北、北海道方面でよく使はれてゐる。

チ、紅灸
 これは、わけのないことで、薬用紅を水に溶かして、それを穴処につけるのであつて、小児の疳虫等に百会穴、身柱穴等に行ふ、九州地方で行はれてゐる。

リ、油灸
 これは、地方の老婆などのよくやつてゐるものであるが、目ぼし、肩コリ、踏み抜き等に用いる、昔の一文銭の真中に四角い穴がありてゐるが、その穴から、種油をしました燈心に火をつけて焼くのである。

その外に水灸、硫黄灸なるものがあるが、それは後日に譲ることにする。

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